口腔リハビリテーション多摩クリニック
事業のお知らせ
平成28年度老人保健健康増進等補助金老人保健健康増進等事業報告書
通所介護及び通所リハビリテーションを利用する要介護高齢者に対する効果的な栄養改善及び口腔機能向上サービス等に関する調査研究事業
研究代表者
菊谷武
日本歯科大学 大学院生命歯学研究科 臨床口腔機能学 教授
日本歯科大学 口腔リハビリテーション多摩クリニック 院長
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地域嚥下調整食連携事業
地域嚥下調整食連携事業について
日本医療研究開発機構研究費 長寿科学研究開発事業
“地域包括ケアにおける摂食嚥下および栄養支援のための評価ツールの開発とその有用性に関する検討”
主任研究者 菊谷 武(日本歯科大学 口腔リハビリテーション多摩クリニック)
はじめに
摂食嚥下障害の重篤化と低栄養は肺炎の発症を招きます。地域医療を担う病院において多くの肺炎患者が入院し、肺炎に対する医療に奔走しているといえます。入院中においては、摂食嚥下機能や栄養状態の評価に基づき、様々な支援が行われます。嚥下調整食の提供もそのひとつであり、摂食嚥下機能に合致したこれらの食事を摂取することは経口摂取を継続していくうえで欠かせないと考えます。地域包括ケアシステムが提唱されるなか、急性期病院や回復期病院あるいは病院から施設在宅への連携またはその逆の連携も重要です。一方、地域において統一された嚥下調整食の段階が存在せず、病院や施設に多くの名称や段階が混在しているのが実情です。この状況においては、地域において一貫した支援は困難であると考えます。
摂食嚥下障害患者の実態
1)施設入居者、在宅療養高齢者において、摂食嚥下機能と食形態の乖離が見られる
本研究における調査では、特別養護老人ホームなどに入居する要介護高齢者260名において、本人の摂食嚥下機能と食形態の乖離が認められた者は、35%にも及び、同様に、在宅療養高齢者(在宅訪問嚥下リハビリテーション対象者)216名において、食形態の乖離が認められたものは、68%にも及びます。
2)在宅療養高齢者において、食事摂取推奨レベルと実際の摂食状況の間には大きな乖離がみられる
在宅療養高齢者(在宅訪問嚥下リハビリテーション対象者)216名において、私たちが、摂食機能評価を行い判断した本人の食事摂取推奨レベルと実際の摂食状況の間には大きな乖離がみられました。経口摂取を行っていなかった摂食嚥下障害患者の約8割に一部または全量の経口摂取が可能と判断され、逆に全量経口摂取していた者の約15%にはこのまま経口摂取を続けると窒息事故や低栄養のリスクがあると判断されました。
3)地域では、どんな情報を欲しているのか
本研究における調査では、肺炎にて入院した利用者が自施設に再入所する際に入院先の病院からどのような情報が欲しいか施設担当者に調査を行っています(対象71施設)。その結果、食形態や水分のとろみの程度といった、食べることに関する直接的なかかわる情報が最も欲しい情報として挙げられ、病院から提供される血液検査データなどを中心とした医療情報とは異なる結果になっています。さらに、介護支援専門員272名に対するアンケート調査においても、肺炎リスクが高いと思われる利用者を担当する際に欲しい情報に、食形態や水分のとろみの程度が挙げられています。
4)地域における嚥下調整食の段階統一の必要性
そこで、地域における嚥下調整食に関する情報共有と質の高い嚥下調整食の提供を目的に東京都北多摩南部医療圏を中心とした地域(小金井市、三鷹市、武蔵野市、府中市、調布市、狛江市、西東京市、日野市)において、嚥下調整食基準表を用いた地域連携モデルを実施します。
5)地域における嚥下調整食連携の手順
(1)自施設の嚥下調整食を知る
“嚥下調整食調査票”を用いて、自施設で提供する嚥下調整食のコード化を図ります。嚥下調整食のコードは、「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」を用います。
(2)学会分類コードを用いて
学会分類2013のコードを用いて、地域との連携を行います。病院施設間においては、患者、利用者が転院、入所する際に、このコードで情報提供します。情報提供の際に、普及するまでの当分の間は、簡単な解説リーフレットを添付します。在宅における市販食品(いわゆる介護食品)においては、農林水産省が形態のコード化の準備を進めていますが、これが確定し普及するまでは、日本介護食品協議会の「ユニバーサルデザインフード」の区分を用います。
下記資料にはダウンロードして皆様の地域連携にお役立てください。
ご使用の際には、下記にご一報いただき、成果などお知らせください。
tamaclinic-renkei@tky.ndu.ac.jp
資料
- 嚥下(PDF : 155.61 KB)
- 嚥下調整食連携データ(PDF : 375.95 KB)
- 食形態調査票(PDF : 188.57 KB)
- 病院・施設向け記入例(PDF : 221.76 KB)
- 通所・在宅・配食サービス向け記入例(PDF : 186.24 KB)
摂食嚥下障害を持つ患者さんや支援をする関係者の皆さんが、皆さんの地域の介護・医療施設で提供する食事形態を分かりやすく把握でき、さらに、宅配食事・介護食品取扱い店の情報を知ることができるホームページが完成しました。
食べることは人にとって最も楽しいことです。しかし、病気や加齢が原因で噛んだり飲み込んだりする食べる機能(摂食嚥下機能)が低下することによって、この楽しみが享受できないこともあります。また、その一口が命がけであったり、食べることで精いっぱいだったりといった場面もあります。一方、食事の形態を工夫することでおいしく食べ続けることができるのも事実です。摂食嚥下障害をもった人に適した食事は医療の場面では“嚥下調整食”と呼んだり、介護や実生活の場面では“介護食”と呼んだりしています。地域で暮らし続けるためには、その方が自宅や病院、施設などどこにいても本人の食べる機能にあった食事を食べるつづけることができるようにすることが重要です。病院や施設では、専門の管理栄養士の指導の下にこれらは提供され、在宅を中心とした場合には、通所施設の食事や宅配食の食事から選ぶこともできますし、介護食品の専門ショップやドラックストア、スーパーやコンビニなどで手に入れることができます。しかし、現状では、皆さんがお住いの地域でどの施設やどのお店でこれらの食事が提供可能なのか、入手することができるのか知ることは困難です。「食べるを支えるHP」では、摂食嚥下機能の低下がみられた方に、地域で安心して食事が継続できるように、これら、“嚥下調整食”や“介護食”を安心して食べることができるよう支援することを目的としています。
本HPは、日本医療研究開発機構研究費長寿科学研究開発事業“地域包括ケアにおける摂食嚥下および栄養支援のための評価ツールの開発とその有用性に関する検討”(主任研究者:菊谷 武)の成果の一部として運用されています。
ダウンロードはこちらから
食支援の図(PDF : 615.83 KB)「こがねい食支援プロジェクト」農林水産省医福食農連携推進環境整備事業
本事業の目的
住み慣れた地域で高齢者(障害者)が継続して食べる楽しみを享受出来るように、地域での支援が重要です。なかでも、本人の咀嚼機能や嚥下機能に合致した形態に配慮した食事を食べることは、誤嚥性肺炎、窒息の予防、低栄養の予防にとって重要です。そこで、地域で形態に配慮した食事(スマイルケア食)を気軽に入手することができ、また、外食においても楽しめる環境を構築する事は意義深いと考えています。本事業の目的は、介護食品メーカーと摂食嚥下障害を専門とする医療機関と、地域の農業関係者、飲食店、商店、高齢者施設が連携して、食べる楽しみを享受できる街づくりを目指すものです。
実施内容
さる12月19日(土)、多摩クリニックにて「こがねい食支援プロジェクト」の一環として“江戸東京野菜”を使用した介護食の試食会がクリニック近隣の住民(地元商店街の関係者、市職員、介護関係者)を招いて行われました。管理栄養士や介護職、そして介護家族が参加するなか、まずは院長の菊谷武より今回のプロジェクトの概要についての説明があり、続いて松嶋あおい氏(江戸東京野菜コンシェルジュ)から江戸東京野菜について、さまざまなエピソードを交えながら野菜の名前の由来や歴史、美味しい食べ方などが紹介されました。このような、地域の伝統野菜を使って介護食を作ることは、地産地消や食育の観点からも重要であり、伝統野菜と介護食のコラボレーションは新たな魅力を生み出そうとしています。
その後、試食会と意見交換会を行い、噛みやすさ、まとまりの良さ、飲み込みやすさを実際に参加者全員に感じていただきました。
今回は以下の4品のスマイルケア食を作り披露しました。
①金町こかぶと里芋のグラタン
②江戸東京野菜のビビンバ
③江戸東京野菜のおでん
④江戸東京野菜の味噌汁
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調理師 高橋浩幸氏
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江戸東京野菜コンシュルジュ 松嶋あおい氏
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江戸時代に江戸やその近郊の野菜づくりが盛んな地域で改良された野菜を「江戸東京野菜」と呼び、小金井市では、その保存と普及につとめています。
江戸東京野菜を使用したスマイルケア食
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里芋のホクホクとチーズのトロッと感がたまらない一品
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金町こかぶと里芋のグラタン
【材料】
金町こかぶ 1/2株/ 鶏もも肉小間/ 里芋 75g/ 玉ねぎ 1/3個/ ホワイトソース 210g/ ピザチーズ 適量/ パン粉(パルメザンチーズ)少々/塩・胡椒・バター 適量
【作り方】
①かぶと玉ねぎは皮をむき、繊維に直角にスライスする。
②里芋は薄くスライスし、鶏肉は一口大に切り、それぞれ軟らかく下ゆでしておく。
③油をひいたフライパンにかぶと玉ねぎを入れ炒め、ある程度火がとおったら耐熱皿に入れる。
④そこに鶏肉のゆで汁でのばしたホワイトソース、ピザチーズ、パン粉をのせ、トースターで焼いたら出来上がり。
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小松菜と人参で鮮やかな色合い
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江戸東京野菜のビビンバ
【材料】
伝統小松菜 1/2株/ 鶏挽肉 75g/ 温泉卵 1個/ 滝野川人参 3/4本/ 伝統大蔵大根 1/2本/ もやし 180g/ 米 100g/ 甘酢・塩・胡椒・化学調味料・すりごま白ごま油・砂糖・醤油・みりん・酢 適量
【作り方】
①米に対して2倍の水を入れて、軟らかいご飯を炊く。
②人参、大根は細く切り、もやしも細かくして茹でておく。
③小松菜は繊維に直角に小口切りにし、調味料で味付けをしておく。
④準備した野菜に塩、胡椒、化学調味料、ごま油、ごまで味付けをしておく。
⑤鶏挽肉に砂糖、醤油、みりんを加えてそぼろを作る。
⑥お皿に、準備したごはん、具材、温泉卵を並べて出来上がり。
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寒い時期にはやっぱりおでん
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江戸東京野菜のおでん
【材料】
伝統大蔵大根 1/3本/ こんにゃく 1/3丁/ 鶏卵ゆで卵/しんとり菜 1/2株/ 滝野川人参 1/4本/ 鶏挽肉 50g/ 絹豆腐/ はんぺん 1/2 枚/竹輪(介護食用) 3/4本/からし・出汁・カツオ節・だし昆布・塩・みりん・酒・醤油・結び昆布 適量
【作り方】
①大根は皮をむき食べやすい大きさに、人参は細かく切る。こんにゃくと竹輪は切り込みを入れ、しりとり菜は茹でておく。
②鶏挽肉に豆腐を入れてよく混ぜ合わせ、半分はそのまま、もう半分には人参を加えてさらに混ぜる。
③巻きすにしんとり菜を並べ、②の半量の具材を置き巻く。人参入りの方も同様に作り、それぞれ輪切りにしておく。
④味を調整した出汁に昆布や用意した他の具材を加え、軟らかくなるまで煮れば出来上がり。
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残った野菜も残さず使って!
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江戸東京野菜の味噌汁
【材料】
江戸東京野菜の残り/ 豚小間 20g/ 長ねぎ 1/10本/ 味噌・出汁・化学調味料・サラダ油 適量
【作り方】
①江戸東京野菜を食べやすい大きさに切る。長ねぎは細かく切っておく。
②油をひいた鍋に豚肉と長ねぎ以外の野菜を入れて炒め、ある程度炒まったら出汁を入れる。
③時々あくをとり、具材が軟らかくなったら味噌や調味料で味付けをする。
④器に入れ、長ねぎをのせれば出来上がり。